本の装丁の楽しみ方|カバー・文字・紙・余白を見る5つの視点

あらすじを読むより先に、一冊の色が目にとまる。題名の文字へ視線が移り、手に取ると、紙の感触が指に残る。装丁との出会いは、物語の最初の一行よりも少し早い。

専門用語を覚えなくても、その出会いは楽しめる。なぜこの本に手が伸びたのだろう。色なのか、文字なのか、それとも何も印刷されていない広い余白なのか。惹かれた場所をたどっていくと、本を選ぶ時間にも、読み終えたあとにも、目を向けたくなるものが増えてくる。

装丁は、カバーだけを指すのではない

装丁には、カバーや表紙の意匠、文字の配置、紙や造本など、本の姿を整える仕事が含まれる。外側を包むカバーと、その下にある表紙は別の部分だ。自分の本のカバーを外してみると、隠れていた色や図柄に気づくこともある。

本を形にする「製本」とは深く関わるものの、同じ意味の言葉ではない。違いを知りたいときは、表面のデザインだけでなく、開いたときの使い心地にも目を向けよう。眺める、持つ、ページをめくる。その間に、本のさまざまな工夫に触れられる。

本を観察する5つの視点

1.カバーと帯を分けて見る

自分の本なら、まず帯を付けたまま眺め、それからそっと外してみる。推薦文や説明がなくなると、同じ絵にも少し違った印象を受けるだろうか。帯が図柄の一部を隠していたり、カバーと帯の色が響き合っていたりする。本を包む細い紙も、全体の見え方に関わっている。

2.題名の文字を見る

大きな文字、小さな文字。太い線と細い線。字と字の間が詰まっているか、ゆったり離れているか。縦組みか横組みかによっても、視線の動きは変わる。絵のない装丁なら、題名の置かれ方がいっそうよく見えるはずだ。

「明朝体だから文学的」「ゴシック体だから軽い」と、書体だけで印象を決めなくてもいい。文字の周りには図柄があり、余白がある。その組み合わせを含めて眺めてみたい。

3.色と余白を見る

最初に目へ入ってきたのは、どの色だろう。題名の周りには、どれくらい空間があるだろう。同じ青でも、隣に置かれた色や紙の質感によって、静かに沈んで見えたり、鮮やかに浮かび上がったりする。「この色の意味は何か」と正解を探すより、まず自分がどう感じたかを言葉にしてみると面白い。

4.紙と、本を開いたところを見る

光を返す滑らかな紙もあれば、指にざらりと触れる紙もある。表紙の厚みは、手に持ったときの印象を変える。画面の画像だけでは分からないところだ。

本文を開いたら、文字の大きさと行間、ページの端の余白にも目を移そう。どれほど整った紙面でも、読みやすさは人や環境によって違う。明るさや読む距離も含めて、自分の目が無理なく文章を追えるかを確かめたい。

5.背表紙とカバーの下を見る

本棚へ戻したあと、長くこちらを向いているのは背表紙だ。同じ作家やシリーズを並べると、題名の位置や色に共通点が見つかるかもしれない。正面からは分からなかったまとまりが、棚の中で見えてくる。

自分の本なら、カバーの下の表紙や見返しまで、無理をかけずに眺めてみよう。書店や図書館の本は、その場所の扱い方に従う。気になる仕掛けがあっても、自由に外したり、強く開いたりしてよいわけではない。

読む前と読後で、もう一度見比べる

読み終えてカバーに戻ると、初めは模様にしか見えなかったものが、ある場面を思わせることがある。反対に、装丁から想像した雰囲気と、実際の物語がずいぶん違う場合もある。その違いも含めて、一冊の印象になる。

読む前に最初に目へ入ったものと、読後に気になったものを、一つずつ書き留めてみよう。同じ表紙を見ているのに、目がとまる場所は同じとは限らない。本を閉じてからも、物語について考えるきっかけがそこに残る。

電子書籍でも、デザインを楽しめる

電子書籍を開いたときも、カバー画像や挿絵を少し長く眺めてみたい。紙の厚みや手触りは画面では確かめられないが、色や線、文字の配置には目を向けられる。

本文の文字を大きくできるかどうかは、形式による。固定レイアウトなど、変更できないものもあるため、購入前に試し読みや商品案内を確認しておこう。

本の各部の名前を調べるときに

カバー、見返し、背、ページ番号を指すノンブル。気になる部分の名前を知りたくなったら、新潮社「本作りの基礎知識」の図解が参考になる。全部を覚えようとせず、いま手にしている一冊の、気になる箇所から調べればいい。名前が一つ分かると、次の本を見るときにも、そこへ自然と目が向く。

この記事を書いた人 Wrote this article

綴 紫乃

綴 紫乃

TOP