星空を望む丸窓のそばに置いた本とガラスの実験道具のイメージ

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』紹介|謎を解くように読むSF

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記憶を失った主人公は、自分がどんな状況にいるのかを、観察と実験によってつかんでいく。『プロジェクト・ヘイル・メアリー』の導入で頼りになるのは、過去を思い出すことだけでなく、いま目の前にあるものから考えることだ。

未知の物質による太陽の異変と、地球の危機。設定の規模は大きいが、そこへ入る入口は「何が起きているのか」という一つずつの疑問にある。主人公も状況をつかめていないため、読者も完成した説明を最初に受け取るのではなく、手がかりから理解を組み立てていくことになる。

この仕組みに、ミステリーと通じる面白さがある。分かった事実と、まだ確かめていない考えを分け、次の観察で何が見え方を変えるのかを追う。科学の用語をすべて知っていることより、主人公が今どんな問いに答えようとしているかを見失わないことが、読む足場になりそうだ。

もちろん、科学的な説明が少ない作品という意味ではない。説明を読み飛ばしても同じ楽しみが得られるとまでは言えない。気になったところで前のページへ戻り、何を見て、どう考えたのかをたどり直せる。文章で読む価値は、その考えている途中にも付き合えるところにあるだろう。

地球規模の危機を、状況を十分に知らない一人の思考から読む。その距離の大きさが、この小説を手に取りたくなる理由になる。先の展開や出会いを詳しく予習するより、最初の分からなさを主人公とともに持って、読み始めたい。

原作を手に取る前に

アンディ・ウィアー著、小野田和子訳。2026年刊のハヤカワ文庫SF版は上下巻で、上巻ISBNは9784150125066、下巻は9784150125073。電子書籍版も案内されている。上下巻の別と、訳者・出版社を確かめて選ぼう。

映画で題名を知った人も、原作では思考の手順を自分の速度で追える。本記事では映画の場面や原作との違いには踏み込まず、出版社が案内する原作の設定をもとに紹介している。

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『プロジェクト・ヘイル・メアリー』上巻の書誌

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』下巻の書誌

早川書房による作品紹介

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綴 紫乃

綴 紫乃

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