草花、地層、暮らしの道具を眺める架空の図鑑のイラスト

大人も楽しめる図鑑おすすめ3冊|草花、地形、暮らしの道具を眺める

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道端で見た花の形が、少し気にかかる。旅先で撮った崖の写真には、何本ものしまが走っている。名前も理由も知らないまま、目だけが覚えているもの。大人になって図鑑を開く面白さは、そうした景色にもう一度会えるところにある。

最初から、詳しくなりたい分野が決まっていなくてもいい。写真に引かれて一冊を開く。その先で「なぜだろう」が一つ見つかれば、次のページへ進める。草花、地形、暮らしの道具。身近なものへの視線を少し変えてくれる三冊を紹介したい。

小さな花を大きく眺める『美しき小さな雑草の花図鑑』

小さな花が、ページの中で大きく見える。『美しき小さな雑草の花図鑑』は、多田多恵子の文と大作晃一の写真で、身近な雑草約100種類を紹介する本だ。立ったまま通り過ぎていた花にも、こんな形があったのか。写真を眺めることが、そのまま観察の入口になる。公開されている目次は、花の色ごとにまとまっている。

「雑草」と呼べば一言で済んでしまうものを、一つずつ見てゆく。名前を覚える前に、色の違いや花の形に目を留めてもいい。気になった写真の説明を読むうちに、名前を知りたい理由のほうが後から生まれてくるかもしれない。

次の散歩では、本で見た花を一つ探してみる。ただ、写真が似ているだけで種類を決めず、葉や全体の姿も眺めておこう。本書の写真だけで採取や食用の判断をせず、まずはその場で観察したり、撮影したりする楽しみ方を。

山と溪谷社/A5変形判・168ページ。紙版と電子版の案内があります。出版社の内容紹介で、写真中心の構成を確認できます。

風景の成り立ちを考える『増補改訂版 地層の見方がわかるフィールド図鑑』

花へ近づけた視線を、今度は風景へと広げてみる。青木正博・目代邦康による『増補改訂版 地層の見方がわかるフィールド図鑑』は、日本の地層や地形を写真と解説でたどる一冊だ。土柱、砂鉄、砂州と陸繋島などの項目を増補。地形図の使い方や観察記録といった、野外で見るための基礎知識も扱っている。

山や海辺で見た形には、そうなった理由がある。目の前の景色と、地球の長い時間を結びつけて考える。それは、旅先の印象を「きれいだった」という一言より先へ連れていく読み方だ。

知らない用語を端から覚えるより、見たことのある海岸や川に関わる項目を開いてみたい。手元の旅行写真と本の写真を見比べれば、似ているところも、違うところも気になってくる。旅に出る予定がなくても、風景を知る時間は持てる。

野外観察では立入制限と当日の天候を優先し、崖の下など危険な場所には近づかないでください。安全な場所から眺めることも、写真で確かめることも、十分に観察になる。

誠文堂新光社/A5判・240ページ。電子版も案内されています。出版社の書誌と目次を確認するときは、2015年の増補版と2017年の増補改訂版を取り違えないようにしてください。

ものづくりの目で見る『民具のデザイン図鑑』

握るための形、運ぶための形、身に着けるための形。人の作ったものにも、じっくり眺めたくなる理由がある。『民具のデザイン図鑑』は、武蔵野美術大学民俗資料室編、加藤幸治監修。同資料室の収蔵品から選んだ民具を、形、素材、機能、意味といった視点で紹介する。

用途を知ると、形が少し分かる。形を眺めると、使う人の動作を考えたくなる。古い道具に残された工夫を、手仕事やデザインへの関心から読むこともできる。自然を扱う二冊とは違って、こちらで向き合うのは、人が暮らしの中で作り出してきたものだ。

気になる道具があったら、それを手にしたときの動きを想像してみよう。どこを握るのか。どう持ち上げるのか。身体との関係から眺めると、古さだけでは捉えられない形の意味が見えてくる。読み終えたあと、普段使っている道具にも同じ問いを向けられそうだ。

誠文堂新光社/A5判・192ページ。電子版の案内もあります。出版社の内容紹介と目次から、扱う視点を確かめられます。

一冊を読み切るより、気になるページを増やしていく

小さな花の写真に引かれるなら、そこから始めればいい。旅行の記憶が気になるなら地形へ、ものの形が好きなら民具へ。図鑑は、初めから順番に読み切ることだけを求める本ではない。気になるページへ戻るたびに、少しずつ親しくなれる。

紙の見開きで眺めるか、電子版を持ち歩くかも考えておきたい。電子版は試し読みで、写真や細かな説明の見やすさを確かめよう。付箋を貼った花に、いつか道端で気づくかもしれない。見慣れたものの名前を一つ知るだけでも、いつもの道は少し違って見える。

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綴 紫乃

綴 紫乃

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