探していた本の隣で、知らない題名に目がとまる。入口の平台を回り込んだ先に、読んだことのない作家の表紙が見える。書店では、一冊へ向かう途中にも、別の一冊に出会う。その偶然に関わっているのが、本の並べ方だ。
探しやすく整える。新刊を知らせる。いま届けたい本を紹介する。棚にはいくつもの役目が重なっている。並び方の名前を少し知ってから歩くと、いつもの売り場にも目をとめる場所が増えてくる。
棚差し・平積み・面陳はどう違う?
| 並べ方 | 見え方 | 本を探すときの視点 |
|---|---|---|
| 棚差し | 本を立て、背表紙を見せる | 著者名や出版社など、その棚の並び順を確かめる |
| 平積み | 本を平らに重ね、カバーの正面を見せる | 新刊やテーマに沿った本など、何が集まっているかを見る |
| 面陳 | カバーの正面を立てて見せる | 周囲の本との関係や、添えられた紹介を読む |
背表紙を目で追うときと、表紙を正面から見るときとでは、足の止まり方も違う。ただし、並び順や展示の基準は店や売り場によって異なる。平積みだから売上順、面陳だから書店員個人の推薦、と一つに決めつけないで眺めたい。
POPは、あらすじとは別の入口
本のそばに置かれた紹介札がPOPだ。短い言葉で作品の雰囲気を伝えるものもあれば、シリーズの読む順番や、集めた本のテーマを示すものもある。書店員が作るほか、出版社などが用意する場合もある。
「面白い」「泣ける」という言葉の先に、どんな読み心地が紹介されているだろう。いま欲しいのは、夢中で先を追える物語か、静かにページをめくる時間か。自分の気分と重なる一言を見つけたら、あらすじや冒頭にも目を通してみよう。短い紹介が、本文を読むきっかけになる。
フェアの棚は、つながりを見ると面白い
季節、土地、食べ物、ある作家。ひとつのテーマで本を集めると、普段は離れた売り場にいる本が隣り合う。小説の隣に紀行文、その向こうに写真集があれば、同じ題材が違う形で見えてくるだろう。
新刊の隣に、ずっと前から刊行されている本が置かれていることもある。題名を見比べ、紹介を読んで、つながりを探してみる。刊行された時期は遠くても、いまの季節やテーマの中で並ぶと、初めて読みたくなる一冊になるかもしれない。
書店員は、売り場にない本を探す窓口にもなる
棚を一巡しても見当たらないときは、分かる情報を持って相談してみよう。題名、著者、出版社。複数の版があるなら文庫か単行本か、翻訳書なら訳者名も伝える。取り寄せができるか、在庫があるかは、本と店舗によって違う。
本が書店へ届く道筋には、出版社から取次を通じる仕組みや、一定の条件で返品できる委託販売などがある。ただし、どの本もどの店も、同じ形で取引しているわけではない。流通の基本に関心が湧いたら、国立国会図書館「カレントアウェアネス」掲載論考(2012年)の出版流通に関する説明が参考になる。棚に並ぶ前にも、一冊には道のりがある。
次に書店へ行ったら試したい3つのこと
- 入口の平台で、何をテーマに本が集まっているかを見る。
- 気になった一冊の隣も眺め、共通点を探す。
- いつも行く売り場から、一つだけ離れた棚を歩く。
背表紙の題名だったのか。カバーの色か、そばに添えられた言葉か。買う本を決めたあとで、自分の足がとまった理由を少し振り返ってみたい。棚を作った人の意図を言い当てなくてもいい。予定になかった一冊を手に取れたなら、その並びを歩いた楽しさは、もう受け取っている。