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怖い夢の相談に付き添って、霊媒の住むマンションへ向かう。推理作家の香月史郎と城塚翡翠の出会いは、そんな少し奇妙な頼まれごとから始まります。
相沢沙呼の『medium 霊媒探偵城塚翡翠』に登場するのは、死者が視える霊媒と、論理を組み立てる作家です。私はこの二人に、どんな事件を解くのかと同じくらい、相手の力をどう受け止めるのかが気になります。
相談に付き添って、知らない部屋へ
第一話「泣き女の殺人」で、香月に電話をかけてくるのは、大学の後輩・倉持結花です。眠りから覚めると身体が動かず、傍らには泣いている女がいる。そんな体験が繰り返され、困った結花は、霊媒への相談に付き添ってほしいと香月に頼みます。
結花は、香月と冗談も交わせる間柄です。私が惹かれるのは、この普段の気安さが先にあるところ。怖い話だけなら遠い世界の出来事にも思えるのに、いつもの調子で話せる人が、本当に困っている。その人と一緒に、知らない部屋へ行く。霊媒という存在が、暮らしのすぐ隣まで近づいてきます。
二人が翡翠を訪ねるのは初夏です。駅前の陽射しの中を歩き、着いた先は高層マンション。建物に入り、案内を受けて奥の部屋へ進むと、窓からの光に代わって、蝋燭の炎が翡翠の姿を照らします。
香月は霊媒をうさんくさく感じる一方で、説明できない何かがあってほしいとも思っています。会う前から否定しきるわけでも、すぐに信じるわけでもない。その揺れを持ったまま翡翠と向き合うから、私も、彼女がどんな言葉を返すのかに耳を澄ませたくなります。
力を借りる前に、ためらう人がいる
出会いを描く第一話に先立ち、プロローグでは、連続死体遺棄事件の被害者の母親が香月に犯人捜しを頼みます。娘を奪った相手を見つけたい。その願いを聞いても、香月はすぐには引き受けられません。翡翠の力を借りることは、彼女を事件の危険に近づけることでもあるからです。
私は、このためらいを飛ばしたくありません。困っている人がいて、力になれそうな人もいる。それでも、だから頼めばいい、と簡単には進めない。答えを求める願いのそばで、別の誰かの安全も考えなければならないからです。
この物語では、霊視で分かったことが、そのまま犯人を捕らえる証拠になるわけではありません。ここで必要になるのが香月の推理です。翡翠が得た情報を、ほかの人にも示せる根拠へどう結びつけるのか。霊媒が答えを知れば事件は終わり、とはならないところに、二人が協力する面白さがあります。
特別な力が使えたら、と期待する私もいます。でも、その力を持つ翡翠を、謎を解くための便利な道具にはしたくない。香月のためらいを知ってからは、二人が何を知るかだけでなく、どんな距離で協力するのかも追いたくなりました。
知人からの相談で始まる出会いと、犯人を見つけてほしいという切実な依頼。身近なやり取りと事件の緊張がつながる、その間にいる二人を見ていたい一冊です。
講談社文庫版の書誌と購入先
ここで案内するのは、小説の講談社文庫版です。同名の単行本や漫画版もあります。
- 書名:『medium 霊媒探偵城塚翡翠』
- 著者:相沢沙呼
- 出版社・レーベル:講談社・講談社文庫
- 文庫発売日:2021年9月15日
- ページ数:496ページ
- ISBN:9784065249710
城塚翡翠シリーズを初めて読むなら、この『medium』から。続刊の紹介や特設サイトのインタビュー後半には、本作の内容に触れる情報があるため、詳しい解説は読後に残しておくのがおすすめです。
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アイキャッチはAIで制作したイメージです。実際の書影や作品の場面ではありません。
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